最後まで諦めず、全力で!
1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり
(1)大学生時代は司法試験を受験することは全く考えていませんでした。
(2)民間企業に就職し、最初に務めた会社を5年程度で退職し、見聞を広めるためバックパッカーをして1年ほど世界を巡りました。
(3)帰国してから独立を目指したものの、資金面などで無理があると感じ、自営としてやりたかったことに関連する会社に就職しました。
しかし、実際に従事してみると、自分のやりたかったことと現実にはかなりの乖離がありました。
(4)そこで、2年ほどでまた退職し、1年ほどアルバイトをしながら、独学で旧司法試験を目指しましたが、短答試験不合格で、あえなく撃沈しました。
(5)短期間で合格することには無理があると思い、法律関係の仕事ができる会社に就職し、仕事をしながら取り組むことにしました。
しかし、入社して15年くらいは真剣に司法試験に取り組むことはなく、宅建、行政書士など比較的取得しやすい資格を得ることにとどまっていました。
それからコロナ禍が始まる前くらいに転機が訪れ、司法試験の合格を目指すこととしました。
独学では難しいことがわかっていたので、今度は受験予備校の講義を受けながら、まずは予備試験の合格を目指しました。
(6)予備試験では、短答には3回目で合格しました。しかし、論文試験は不合格が5回続き、順位は少しずつ上がってはいましたが、このまま続けて合格できるか、自信がありませんでした。
そこで、ロースクールの選択肢もあると考え、夜間社会人向けの筑波大学法科大学院既修者コースを受験したところ、合格し、入学しました。
コロナ禍でテレワークやリモート授業が多く取り入れられたことが、私にとっては大きな追い風になったと思います。
入学1年目には予備試験も受けたのですが、論文が不合格でした。しかし、在学中受験の資格は得られたので、入学2年目に司法試験を在学中受験したところ、なんとか1回で、合格することができました。
かなりタイトなスケジュールでしたが、詰め込んだことが、かえって良かったと思います。
2 受験対策
(1)辰已講座の利用方法とその成果
ア 答練
予備試験向けを、ひととおり受講しました。自分で答案を書くモチベーションになるだけでなく、客観的に添削していただけるため、非常に有用でした。
イ 模試
ある模試の初日の朝、会場のトイレ(大)に財布を落とし、あせって探しまくって、結局警備室に届いていました。走って席に戻り、開始時刻ぎりぎりで席につきました。
それからは、財布は持って行かないようにしました。予行演習として、大きな意義があったと思います。
(2)使用した本など
ア 辰已書籍
・短答パーフェクト
全問正解するまで繰り返し解きました。
・趣旨規範ハンドブック
自作の暗記カードに記載する基礎などに利用しました。
・一冊だけで労働法
過去問を解くときと、自前の暗記カードに記載する際に利用しました。
・えんしゅう本
債権法の大改正があった民法のみ利用しました。
・ハイローヤー
本番前の山あて特集の冊子を購入して、漏れがないかの最終チェックに生かしました。
・民事実務基礎(赤本)、刑事実務基礎(青本)
予備試験向けに購入しましたが、ロースクールの授業でも役立ちました。
・講義レジュメ
答練後の講義や復習などに利用しました。
・論文A答案再現&分析本、論文全過去問集
過去問の演習などに利用しました。
イ 他
・基本書は辞書的に使うくらいで、ほとんど利用しませんでした。
(3)私がやっていた勉強方法等
ア 短答
(ア)対策
平成18年からの過去問を全問正解するまで繰り返し解きました。
間違った問題などは、小さいノート(Ca.Crea)に整理し、次に確実に正解できたら、消し込んでいくという方法をとっていました。
誤った肢には赤色でチェックしていましたので、本番前に見返すときに役立ちました。
(イ)解き方
① ざっと全頁をめくる。
② 一番最後の問題から解いていく。
∵最後の問題が簡単なことがある。
③ マークシートの問題番号に対応する問題文の箇所に正答と思う番号を書く。
∵マークミス防止。
④ 前に戻りながら、時間がかかりそうな問題など、少しでも考え始めたらすぐに飛ばす。
∵わかる問題を確実に押さえる。
⑤ 一番初めまで行ったら、正答と思う番号が書いてあるものをマークシートにマークする。
∵どのくらい、マークできていないか、把握する。
⑥ 今度は一番初めから、少し時間をかけてでも、正答と思う番号を書いていく。
⑦ 全部マークしていく(わからなければ、「3」とかで、とにかく埋める)
⑧ マーク漏れがないかチェックする。
イ 論文
(ア)対策
試験で書かなければならない定番の定義(規範)などは、スマホ対応暗記カード(SmaTan)に書いておき、全科目毎朝見返していました。
(イ)書き方など(パソコン受験になると変わると思います)
a 前提
本試験の答案用紙は、つるつるした感じで、筆が滑りやすい紙が使われています。
必修科目では、その答案用紙(片面印刷)8枚の左上がホチキスで綴じられており、ホチキスを外すことは禁止されています。
なお、選択科目では第1問と第2問は4枚(片面印刷)ごとに分けられており、それぞれホチキスで左上が綴じられています。
このように、予備試験の片面見開き2頁、両面印刷とはずいぶん異なり、ぱっと見て、どのくらい書いたかがわかりにくく、いちいち頁を繰っていくことになります。
そのため、わからない問題は行を開けておいて、後で書き足す方策がとりにくいです。
そこで、原則として全問の答案構成をし、最初の問題から順番に書いていく方法に変えました。
また、内容面ですが、「大筋を外すといくら書いても0点」ということを常に意識していました。
b 流れ
① 本試験で配布されるA3の答案構成用紙を2回二つ折にする(8枠になり、ちょうど答案用紙の枚数になります。)。関係図を描くのに利用するため、問題文の表紙(A3)を外す。
② ざっと、問題文前頁をめくる。
③ 点数配分が書いてあれば、チェックする。
④ 問われていることを確認する。
⑤ 線を引きながら問題文を読む
⑥ 関係図を書く
例) <甲> ←原告を左に、当事者は< >で <乙>
「金!」 ←主張は「 !」 「ヤ!」
∵ 甲 乙 ∵(95)
(587) ←条文
⑦ 答案構成をする
※原則として、1は問題提起、2は規範、3は あてはめ、4は結論と決めていました。
例)第1 第1問
1 「・・・か。」← 問題文を端的に書きなおす
∵ 答案だけを見て、問いと結論がかみあっているかを確認別できるようにするため。
「・・・が、問題となる。」 ←論点を指摘
2 規範定立
3 あてはめ
4 結論
⑧ 関係図と答案構成をたよりに、必要に応じて問題文も参照しながら一気に答案を書く。
(私の場合は、1ページ書くのに10分から15分くらいでした。)
ウ 筆記用具など
・万年筆(カクノ)
軽い力でも見やすい文字を素早く書くことができ、筆力の不足を補うことができました。
・フリクションボールペン(4色。0.5)
消せますし、ペンを持ち替えることなく4色を使い分けることができ、手放せませんでした。
・蛍光ペン(パイロット フリクションライト イエロー)
消せますし、大事なポイントが一目でわかるようにできるので、手放せませんでした。
・dretec 学習用デジタルタイマー
試験時間や学習時間の管理に使用し、故障に備えて2個っていました。
・エアウィーヴ クッション(1万円くらい)
本試験ではパイプ椅子に長時間座るので、疲労軽減や高さ調整に役立ちました。
・予備試験用法文(六法)
本試験の法文は原文です。刑訴などでは見出しもなく、それに慣れるため使用しました。
3 本試験当日まで
(1)成績
ア 令和5年の予備試験
短答、論文ともに900番台で、不合格でした。
イ 法科大学院での成績
演習科目でのGPAが2.5以上あれば受かるといわれていましたが、自分は2くらいでした。
ウ 模試
辰已を含めて2回受けましたが、どちらも、合格推定点まで、あと少し及ばず、といったものでした。
エ 各科目1、2点ずつ程度UPできれば受かるはずと考え、諦めずに取り組みました。
(2)本試験当日
※前の科目を振り返らず、最後まで全力で取り組むことを意識していました。
【1日目】論文
[選択科目(労働法)]手答えは悪くありませんでした。←結果52.01点
[憲法]大筋は外していないが、良い点はとれないだろうという印象でした。←結果D
[行政法]全くわからず、誘導などに沿って問題文を書き写した感じでした。←結果D
【2日目】論文
[民法]それほど、悪くはないと感じました。←結果C
[商法]得意科目だったのに、1問目がわからず、しかたないという感じでした。←結果C
民訴]それほど、悪くはないと感じました。←結果A
※2日目が終わった後、接骨院でマッサージを受けました。
【中日】
疲れをいやすことを第一にし、がむしゃらに勉強に取り組むことはしませんでした。
【3日目】論文
[刑法]不得意としていた各説からの論述もあり、うまく書けなかったと思いました。←結果C
[刑訴]論文での今までの不出来を挽回することに力が入りすぎ、失敗したと思います。←結果D
【4日目】短答 ※論文の不出来を挽回するには、相当高い点をとる必要があると考えて臨みました。
[憲法]自信をもって答えられる問題が少なかったです。←結果40点
[民法]よくできたのでないかと思いました。←結果56点
[刑法]時間不足で、2、3問は内容を読まずにマークしました。←結果36点
↑ 結局、Eはなく、短答で挽回して、なんとか合格できました。
4 自己の体験を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
(1)法科大学院在学生へのアドバイス
自分の通っている法科大学院では、短答対策は一切なく、短答不合格の方が多かったです。
同じような環境の方は、早めに計画性をもって、自主的にこなしていくことになるかと思います。
(2)来年初めて受験する方へのアドバイス
できれば、本番と同じ会場、同じ日程で模試を受け、疲れ具合など実感して本番に臨むのが良いと思います。
また、本番直前の辰已の講座において、松永講師が、「会場に行くこと!」「当たり前ですが…。」とおっしゃっていました。行くだけでも意外と大変です。
(3)来年のリベンジ合格を目指している方へのアドバイス(試験当日までの過ごし方など)
今まで頑張ってこられた方々は、非常につらいご経験だったと思います。
ただ、実際に受験された経験は模試よりも、はるかに役立つと思います。
また、松永講師が、「大丈夫。受かりますよ!」「根拠はないですが、二人に一人は受かる試験ですし…。」旨のお話をされていました。
プレッシャーはあると思いますが、本番では落ち着いて、実力を発揮されることを願います。
合格発表で自分の受験番号を見つけたときは思わず「よしっ!受かった!」と声を上げてしまいました。
苦労された方ほど、喜びは大きいと思います。
(4)社会人受験生へのアドバイス
ア 筑波大学法科大学院
私が、当初法科大学院は考えなかった理由は、㋐社会人(フルタイム)では、通えない㋑費用が高いというものでした。
しかし、㋐筑波大学では、録画授業やオンライン授業が多く、授業も平日は18時20分からで、期末試験も土日がメインで平日の場合でも午後7時から始まるなど、社会人でも取り組みやすい環境でした。
㋑費用について、私の場合は教育訓練給付(ハローワーク)として半額くらいが返ってきました。
社会人の方で、ロースクールを考えていらっしゃる方には、筑波大学をお勧めします。
イ 時間の捻出
ある講師は、「言い訳をしている人は、いつまでたっても受からない。」「勉強時間がとれないという言い訳をしようと思えば、いくらでも正当な理由が見つかる方々ばかりである」といった旨のお話をされていました。厳しいお言葉ですが、そのとおりだと思います。
筑波大学は社会人ばかりですが、皆さん何とか工夫して、根性で合格されています。
「最後まで諦めず、全力で!」(ある講師より)
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
