社会人初学者の合格体験記
1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり
社会人として働いている中で、何か手に職というか、考え方のフレームワークというか、そういったものを身に着けたいと考えていたのですが、2020年6月初旬、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続いていた時に、「そうだ、弁護士になろう」と思い立ちました。なお、私は非法学部卒で、仕事で法務を担当していた等でもありません。「へー、憲法って、国民じゃなくて国家に向けて書かれてるんだ」というところからのスタートでした。
仕事を辞めて法科大学院に通うことができるほどの貯金はなく、一方で仕事を続けながら通学するのは時間的に厳しかったので、予備試験を目指すことにしました。
合格までの道のりは以下の通りです。
2021年 予備試験短答落ち(4点足りず)
2022年 予備試験短答通過、論文落ち(4点足りず)
2023年 予備試験合格
2024年 司法試験合格
2 受験を続け、合格に至った経緯(と、辰已講座の利用方法とその成果)
勉強を始めてから約1年間は市販の入門書やテキストを使って独学で勉強しました。
あまり深い理由はないのですが、あえて言えば、大人になってからの習い事(語学、着付けなど)はまず独学でやってみることをマイルールにしていたためです。いったん独学することにより①高い授業料を払って始めてみたものの、興味を持てずすぐにやめてしまうことによる出費を抑えられる、②独学した後に人に習うと教えていただけることの有難みが感じられる、③予習ができている状態なので、授業についていけなくて通うのが嫌になったり自己嫌悪に陥ることを避けられる、ということを実感していたので、法律の勉強もまず独学でやってみました。
約1年間独学を続け(論文を書くのに慣れるために予備スタ論は受講しました)、2021年の予備試験を受けてみたものの、短答不合格。このまま独学を続けた場合、短答は通過できるようになるかもしれないが論文合格は無理だろうと感じ、予備校の講義を受講することにしました。
独学で孤独を味わっていたので、予備校では先生や同志との交流が欲しいと思い、通学が可能な中から選びました。いくつかの予備校を体験受講したりサンプル講義を聞いた中で原先生の基礎講座を選んだのは、一番お話が面白かったからです。他の予備校ではテキストを読み上げるようなスタイルの講義が多かったですが、原先生はご自身のエピソードや実務の経験を交えた漫談(!?)を繰り広げてくださるので、飽きずに続けられる、また、記憶が定着しやすそうに感じました。
ちなみに、基礎講座は音声ダウンロードができるので、司法試験直前まで約4年間、移動中や家事時間に聞いていました。全講義10回ずつくらい聞いたと思います。ですので先生の交友関係や家族構成は完璧に頭に入っています(笑)。そして、原先生は初学者向けに「厳密にいうと若干正確ではないんだけど、単純化するとこういうこと」という説明を頻繁にしてくださったのですが、これが口述試験の勉強にとても役に立ちました。口述では問いに即答しないといけないので、単純化して頭に入れておくのが大事だからです。
基礎講座に続いて翌年は論文過去問基礎答練も受講しました。この解説講義ではA答案だけでなくC答案も詳しく解説していただけたので、現実的な合格答案のレベル感を把握することができたのがよかったです。また、民事実務基礎、刑事実務基礎の回、特に民事だと準備書面の書き方、刑事だと犯人性の認定の書き方を先生が実演してくださったのがとてもよかったです。「こう書けば点が取れるんだ!」というのが実感できました。実務基礎科目の実践的な教材は少ないので、他の受験生と差をつけられるポイントになったと思います。
2022年の予備論文試験の時点では「論文過去問基礎答練を受講済の科目は何とか戦えるかもしれないが、未受講の(まだ開講されていない)科目は無理だ・・・」と感じていました。結果的には4点足らずに不合格だったのですが、悔しいというよりはそんなに合格点に近かったことにびっくりというのが正直なところでした。答練で毎週答案を書いていたので、知らないうちに書く力がついていたのだと思います。
2023年の予備試験に合格したのですが、正直なところ法律の知識や論証というより、試験戦略で受かったと思っています。苦手な人が多い実務基礎科目や選択科目で点を取ること、刑法に深入りしないこと等を意識していました。また、時間配分も得点を最大化できるように計算していました。例えば民事系なら、私は民訴が苦手なのでコンパクトに最低限のことだけを50分で書き、その分民法と商法は各80分使って、問題提起→規範→あてはめ(事情と評価)→結論を細かくしっかり書く、という感じです。その代わり、司法試験を受験する際には予備試験の結果発表後に約半年で問題文の長さや書く分量の多さに慣れる必要があることや、1科目ごとに試験時間が分かれているので特定の科目に長く時間を使うことができないことに苦戦しましたが・・・。
予備試験の論文合格後、口述模試も受験しました。辰已以外の予備校の模試も受験しましたが、辰已の模試は2人1組になって相方が受験しているのを見ることができるので、2通りの問題を体感することができたのがお得感がありました。
司法試験の勉強は前述の通り予備試験に最適化されていた試験戦略を組みなおす程度しかできなかったので、過去問を解くことを中心にしていましたが、模試と直前答練、福田先生の最後のすべらない講義だけは受講しました。本試験では刑訴で違法性の承継が出題されましたが、模試の出題が的中していたので受験して本当によかったです。そしてラッキーなことに福田先生に講義中に答案をほめていただいた問題だったので、試験中、自信を持って書けました。ですが、それ以上に効いたのは、オンライン決起会でお聞きした「Never, Never, Never, Never Give Up」(福田先生)、「司法試験は、鉄棒に最後までぶら下がっている人が合格する試験」(西口先生)といったお言葉でした。過酷な試験なので、試験中に心が折れそうになります(特に40代には、右手を動かし続けることも、試験会場のエアコン設定温度の低さも、大変キツかったです・・・)。事前に「そういうものだ」「みんなキツいんだ」と分かっていたことで救われました。
3 使用した教材
勉強を始めて2-3年は、知識がなさすぎて基本書が読めず、趣旨・規範ハンドブックや市販の論証集も使用できず、基礎講座のテキストやスタ論の基本レジュメを使いながら、自分でまとめノートを作っていました。2回目の予備試験の後くらいから基本書が読めるようになり、3回目の予備試験に向けてようやく趣旨・規範ハンドブックに情報を集約できるようになりました。
具体的に使用した教材は以下の通りです。
<基本書>
憲法:芦部憲法
行政法:基本行政法
民法:潮見民法(全)
商法:リーガルクエスト
民訴:基礎からわかる民事訴訟法
刑法:基本刑法Ⅰ・Ⅱ
刑訴:リーガルクエスト
労働法:労働法(水町)
あまりこだわりがないので、基礎講座のレジュメに掲載されていたリストの中から選びました。基本刑法は多くの受験生が口述対策で使用するので、(たまたまですが)最初から買っておいてよかったです。
<過去問>
予備試験、司法試験とも、パーフェクトぶんせき本
(入手しにくい年度があるので、その年度分だけ別の市販本)
不合格答案も含めて多くの答案が掲載されているので、現実的な合格レベルを把握できる点が気に入っていました。
<その他>
趣旨・規範ハンドブック
1冊だけで労働法
短答は基本的に過去問だけやっていました。肢別ではなく、年度版の短答過去問パーフェクトを試験時間と同じ時間で解き、間違えた問題は解説を読む、解説を読んでも理解できなければテキストを読む・・・というのを繰り返していました。短答も試験戦略で戦っていたので、消去法で選択肢を絞ることや時間配分も含めて問題を解くことに慣れたかったためです。
ただ、肢別アプリはスキマ時間に使っていました。本もタブレットも開けないような満員電車の中でも勉強できるので、本当に便利です。
4 自己の体験を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
私は仕事をしながらの受験でしたので、机に向かって勉強できるのは平日だと平均2時間程度でした。そこで、家事をしながら講義音声を聞いたり、電車移動中に座ることができれば基本書を読み、混んでいれば肢別アプリを解くなどでプラス2-3時間を捻出していました。仕事をしていると自分でコントロールできないスケジュールも多いですが、(意図的に休む日以外は)全く勉強ができなかった日を作らないことが大事で、耳だけでも、目だけでも、できること勉強を少しずつやっていると、チリツモでけっこう大きくなると思います。
答練、模試、本試験はなるべく多く受けた方がいいです。試験時間で答案を書き、人に採点していただける機会は貴重です。特に本試験は、受かる確率が0%だと思っても出願できるのであれば絶対に受けた方がいいです。前日・当日の時間の使い方、試験会場の雰囲気、試験前の待機時間の緊張感などは、経験しないと分かりません。そして一度経験したということが翌年以降に大きなアドバンテージになります。
社会人でも、初学者でも、LSに通えなくても合格できたので、やり方次第で何とかなります。これから受験される方も、先生方のお話、合格者の体験談を聞きつつ、いいとこどりして自分に合った戦い方を見つけて、頑張ってください!
辰已受講歴
●2024年
全国公開模試
直前合格答練
福田先生の最後のすべらない講義
●2023年
予備試験論文公開模試
予備試験論文予想答練
口述模試
●2022年
予備試験論文過去問基礎答練
選択科目集中講義
予備試験スタンダード論文答練(第2クール)
予備試験論文公開模試
●2021年
基礎講座
予備試験スタンダード論文答練(第2クール)
●2021年
予備試験スタンダード論文答練(第1・2クール)
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
