労働法は当てはめが大切!暗記にめげないで
1 労働法を選択した理由
私は労働法を選択しました。もともと、電通過労死事件を担当していた労働弁護士の先生が主催していたゼミに参加しており、その先生に憧れて法律家を目指し始めたためです。同じゼミにいた司法試験を目指す仲間も、ほとんど労働法を選択科目にしていたため、安易な気持ちで労働法にしました。選択科目にはそれぞれ特徴があり、いろいろ調べていると結局どれがいいのか迷ってしまうと思いますが、結局どれも大変なので、気軽に決めてしまっても良いかもしれません。ただ、労働は私たちにとって、とても身近なもので、友人や家族からも、労働法分野について聞かれることが多かったです。実務でも日常生活でも役に立つ、という点で労働法を選んだ側面はありました。
2 労働法のメリット・デメリット
メリットとしては、労働法を選択する人が多いため、教材が充実しています。基本書も何冊もありますし、事例演習本にも事欠きません。アドバイスも多くもらえますし、大学や院でも労働法の授業やゼミは必ずあると思います。選択者が多いと、自主ゼミも組みやすいです。
また、論点がわかりやすく、基本的には当てはめ勝負になる点でも、大きなミスが少ないのがいいと思います。労働法は実務に出てからも使うことが多いと聞いたので、そういった意味でモチベーションが保ちやすいのも利点です。
さらに、労働法は書き方がある程度決まっているのもメリットです。選択科目は2問出題されますが、労働法では、1問目が個別労働法、2問目が集団的労働法から出題される傾向にあります(近年は二つが混ぜられて出題される場合もあります)。特に2問目の集団的労働法分野からの出題は、不当労働行為の話が主で、書き方の型がほぼ決まっています。つまり、問題演習を重ねれば、ある程度点数が見込めるということです。
デメリットとしては、暗記量が多い点です。論点や重要判例が多く、論証を覚えるのに時間がかかります。また、当てはめが苦手だと相性が悪いかもしれません。王道科目である分、コスパは良くないと思います。
3 法科大学院での選択科目学習状況
法科大学院では、2年生の前期に労働法の授業をとっていました。重要判例を中心に勉強するオーソドックスな授業です。ただ、その時点での私の成績は全然良くありませんでした。法科大学院の定期試験の成績が良くなくても、あまり気にしないで大丈夫です。
オーソドックスな授業の他に、外国の労働法と日本の労働法を比較するというゼミも履修していました。学問的には面白かったです。司法試験対策という意味では、やはり自学自習が大切ではないかと思います。
4 成功した攻略法
選択科目だからといって、特別なことはありません。基本的な勉強方法は他の科目と同じです。過去問演習をし、論証集に改善点を一元化するという、シンプルな方法で良いと思います。ただ、私は時間がなかったので、選択科目については他の科目よりも起案した数は少ないです。答案構成をメインに行なっていました。選択科目も他の科目と同じだけ点数配分があるので、侮らず、きちんと起案しておけばよかったと、少し後悔しています。私と同じように時間がなく、答案構成をメインに勉強するという方は、答案構成でも当てはめをしっかりやることをお勧めします。労働法は当てはめが命ですので、日頃から当てはめをしっかりと行うという意識と訓練は、必ず本番で点数になります。
私は、答案構成に一問当たり20〜30分ほどかけていました。選択科目は、他の科目に比べて時間が余りやすいので、そのぐらいかけても問題ないと思います。選択科目に関しては、時間よりも、質にこだわって書いた方が良いです。
5 使用した本
基本書として、荒木先生の労働法、水町先生の労働法を使用していました。どちらか一冊あれば十分だと思います。水町先生の労働法の方が薄いため、初学者で基本的な部分を通読するなら、水町先生の労働法の方が良いです。荒木先生の労働法は、詳細でほとんどの事項が網羅されており、制度改正の背景なども細かく載っていますが、分厚いのが特徴です。荒木先生の労働法は、問題演習をして、わからない箇所があったときに、辞典として使うのがベストだと思いました。労働法はかなり王道分野なので、基本書に当たり外れはほとんどありません。各自にあったものを使うのが良いと思います。授業で指定された教科書があれば、それで十分でしょう。
問題演習は、『事例演習労働法』を使用していました。司法試験を作るような先生が、問題だけでなく解説・模範解答まで書いているため、根拠がしっかりしているのが良い点です。特に模範解答は参考になります。司法試験を作る先生が、どの程度の解答を求めているのかが、わかりやすいです。
6 辰已講座の利用方法と成果
私は辰已の全国模試を受けましたが、オーソドックスな論点がしっかり盛り込まれており、復習に最適でした。解説も丁寧で、模範解答は、書き方の参考になりました。
辰已の模試は、捻りすぎた問題がなく、かなり本番に近い良問揃いだと思います。基本論点の確認になります。模試を受ける人数もかなり多いため、他の受験生と比較しての自分の位置を測るのにも役立ちます。模試はできれば会場で受けた方が良いと思います。本番と同じ環境でしか練習できないことがあるからです。本番の緊張感や、時間配分、休憩時間の過ごし方など、勉強になります。模試を会場で受けるのは、時間や労力がかかる、法科大学院の授業を休まなければならないから嫌だ、と思う方でも、問題だけは解くことをお勧めします。模試の問題が本番で出るかはともかく、他の受験生が網羅している問題を自分もやることで、自信が持てるからです。
7 これから受験する人へのアドバイス
初学者の時は、暗記量が多くて、しんどくなってしまうと思います。いきなり全部を完璧に覚えようとしなくていいのです。論証は何度も見返して蓄積させていきましょう。また、労働法は特に出やすい分野がはっきりしています。就業規則や懲戒、不当労働行為など、超典型論点から固めていくと、自信になると思います。
直前期は、過去問演習が中心です。労働法は、いかに多くの事情を使って端的に当てはめをしていくかがポイントです。当てはめの練習をするのが良いと思います。