敗因分析は大事、ただ最後は健康と気合い
1 司法試験の受験を決意した経緯
小さい頃からバイオリンを習っており、高校では弦楽部に所属していたことから、人前で弾くことがありました。その際、聴き手の方が喜んでくれていたのを見て、何か人の役に立つ仕事をできればと思っていました。そのような仕事として法曹という職業に興味を持ったのは中学時代でしたが、大学受験のときに法曹を目指す決心をしました。
2 法科大学院前の学習状況
地方の大学にいたこともあり、周囲に司法試験を目指している人は少なかったように思います。そのため、司法試験の情報及び予備校の情報を大学内で得るということは、難しかったです。また、大学1・2年の頃は、オーケストラに所属するなどしてほとんど勉強していませんでした。
ただ、大学3年の頃から、民法のゼミに所属し、予備校の入門講座を受講して各科目は1周させて勉強したことにより、何とか法科大学院に進学したという状況でした。
3 法科大学院入学後の学習状況
法科大学院入学後の学習状況としては、学費全額免除で入学したこともあり、法科大学院の授業を真面目に取り組み、次年度においても学費がかからないように勉強をするという感じでした。
今になって思えば、このときの2年間の勉強は、司法試験に向けての勉強というよりも法科大学院の授業のための勉強をしており、のんびりと勉強していたと言えます。もっとも、この間のしわ寄せにより司法試験を4回受験するということになりました。
4 受験対策
(1) 辰已講座の利用方法とその成果
1回目の受験は短答で不合格となりました。短答が不合格であると判明してすぐに、何とかしなくてはと思い、おそらく短答対策講座で一番時間をかけて授業をしている短答完璧講座を受講しました。この講座は、3科目で100時間ほどかけて基本的なことから説明してくれていることから、法科大学院の授業の為だけに勉強していた穴の多かった私にはありがたい講座でした。この講座により、4回目の受験に至るまで、短答式試験に不安はなかったですし、コンスタントに点数を確保できていたと思います。また、論文対策として、西口小教室を受講していました。もっとも、この時点の私は、基本的知識から確立させなければならない状況であったことから、司法試験委員の求める事項や相場感といったことを想定する以前の問題を抱えていました。そのため、うまく答練やゼミを使いこなすことができず、2回目の受験も不合格となりました。
3回目の受験にあたっては、前年に西口小教室で受験生の相場感といったものは何となく想定できるようになったと考え、基本的な知識を維持すれば、合格ラインに乗ると思い、全国模試のみ受験し、本試験まで調整しようと計画しました。ただ、3回目の受験も不合格となりました。
3回目の不合格後、失権の足音が聞こえてくることもあり、精神的に追い込まれていく状況となっていました。ただ、複数回受験生によくある傾向として前年の方法を踏襲してそのまま失敗するという話を聞くこともあったので、何かやり方を変えなければと思い、西口竜司先生のガイダンスや西口先生の個別相談に行きました。その中で、私の敗因が2回目の受験時と3回目の受験時とで異なるということが見えてきました。その際、指標としたのは、自分(基礎知識の習得、筆力、文章力など)、司法試験委員(問題文が問うていること、争点、論点など)及び他の受験生(相対評価の視点、相場感)という3つの視点でした。この3つの立場から自分に欠けているのは何かを改めて見直していきました。これにより、3回目の受験時の敗因は、問題文の読み方が浅いことから起因して、問いに答えることができていない場合や論点がずれることがあるというものであり、司法試験委員の立場からの視点に問題を抱えていると考えました。そのため、他の受験生が同じ問題文を見て何を想起し、どのように書いてくるのかを見ることのできる西口小教室をもう一度受講することを決心するに至りました。
2度目の西口小教室受講に当たっては、初回と異なり基礎知識は何とか維持するというものになっていました。一方で、答練ごとにどのように問題文と向き合うかばかりを考えていました。その練習として近年の過去問の問題文を何度も読み直し、出題趣旨・採点実感は常に持ち歩いて読むようにしていました。答練の点数自体はほとんど気にせず、出題者の意図とずれたときは何故ずれたのか、他の受講者はその意図に気づけていたのか、気づけていたとしてどういう方法で気づけたのか、というのを他の小教室生に聞くなどして、分析に時間をかけていました。これを続けていくと、答練の問題文と過去問の問題文の性質の違いみたいなものが見えるようになっていったと思います。その結果、4度目の本試験において、前年よりも問題文自体の喰らいつき方が格段に変わったと思います。
合格まで長くかかりましたが、自己の敗因分析が何よりも重要でしたし、その敗因をなくしていくためには、西口先生や小教室生の存在が不可欠でした。そして、少しずつでも前進することで、ようやく手にした合格だったと思います。
(2) スケジュール管理方法
私は、1日の行動を細かく記録して勉強を計画するタイプではありませんでした。特に4回目の受験の年は、答練やゼミをペースメーカーにして、やるべき演習等の分量を定め、それを期間内にこなしていくというものでした。
(3) 私が使用した本
一通り受験生に定評のある基本書と百選は各科目持っていると思います。ただ、法科大学院修了後、基本書を開くことはほとんどなくなりました。一方、百選については、答練等で話題に挙がるたびに該当判例を見直すようにしていました。見直すと言っても、事実の概要と判旨、判旨を理解するのに必要な解説部分のみを読むくらいでした。
論証集については、辰已の趣旨規範ハンドブックを持っていました。この本に他社の論証集や再現答案で見かけた論証で自分にとって使いやすい表現をしているものをドッキングさせるなどして一元化するようにはしていました。
一番役に立ったのは、辰已の新論文合格答案再現集とパーフェクトぶんせき本でした。これらは、良い・悪い答案の形を、出題趣旨や採点実感を参照して掲載されている答案を自らが採点委員のつもりで採点していくことで、少しずつ掴んでいくことができるようになる本だと思います。そして、自分が目指せそうな答案や流れの綺麗な答案を繰り返し読むようにしていました。
5 自己の反省を踏まえ、これからの受験する人へのアドバイス
今振り返ると、司法試験受験生活は長かったですし、その原因は、大学生時代及び法科大学院生時代をのんびりと過ごしすぎたということ以外にないと思います。
ただ、4回受験した中で、前年の結果を下回ることになったことはありませんでした。それは、毎年敗因分析を行い、前年と違う方法を試し続けたことに理由があると思います。私のような複数回受験者には、必ず敗因があり、それに気づかず解消しないまま次年度受験することになれば前年と同じ結果になる確率が非常に高くなってしまいます。そのようにならないためにも、軌道修正の方法を常に考えていく必要があると思います。
その方法として、自分ひとりで考えるだけでなく、予備校、合格者など頼れるものは何でも頼ってしまうことが大事だと思います。たしかに、不合格したことに対する不甲斐なさや自己嫌悪から頼りにくいと感じることもあります。しかし、自分を応援してくれている方の存在、自分と似た境遇にありつつも前進しようとする方がたくさんいます。予備校は選択肢の一つとしてあるといえます。
そして、司法試験業界を受験生の立場で長く見ることになりましたが、その間、いくつも予備校ができ、基本行政法などのわかりやすい基本書がいくつも出版され、戦略論ないし方法論が多く提唱されることで情報過多の状況にあると思います。しかし、どのような状況であれ、主体は自分であり、上記のものは自分を分析し、合格するための材料にすぎず、振り回されないようにして欲しいなと思います。
最後に、敗因分析の重要性など色々と述べてきましたが、司法試験は試験期間だけでも5日間あるというしんどい試験です。これを乗り切るには何よりも健康であることが重要であり、身体面及び精神面の双方の健康が求められます。受験生間の実力差は、おそらくそれほどないと思います。試験の結果を左右させるのは、最終的には、健康であり、やり切るという思いの強さだと思います。健康とモチベーションを維持しつつ、敗因分析から正しい方向性を掴んで、前進していっていただければと思います。
辰已法律研究所 受講歴
【2019年対策】
・西口小教室
【2017年対策】
・西口小教室
・短答完璧講座
【2016年対策】
スタンダード論文答練 西口クラス