短答対策を怠らない
1 司法試験の受験を決意してから合格に至るまでの経緯
通っていた大学の法学部では政治と法律の勉強が中心でしたが、法律の勉強の方に魅力を感じその分野を突き詰めたいと考え、法科大学院に進学し3回目の受験で司法試験合格に至りました。
2 法科大学院受験前の学習状況
学部3年生への進級と同時に、辰已法律研究所(以下、「辰已」。)とは別の資格予備校の法科大学院受験講座を受け始めました。しかし、大学の学期末試験も法科大学院の入学試験も専ら論文試験だったため、短答試験の勉強は全くやりませんでした。
3 法科大学院入学後の学習状況
(1) 初回受験時の学習状況
法科大学院入学後は、大学院の授業もあり司法試験の受験勉強をする時間を確保できませんでした。そして、翌年度後期からスタンダード論文答練(以下、「スタ論」。)を始め辰已の司法試験受験講座をとり始めましたが、大学院の勉強との時間配分が分からず、答練はほぼ40点台かそれ以下で復習も一切できませんでした。
また、短答対策は入学直後に始めたものの、古本の旧司法試験短答過去問集を買い正答率を問わず漠然と解いていただけでした。そして、辰已ではスタンダード短答オープン(以下、「スタ短」。)や司法試験総択(以下、「総択」。)を受けていましたが、足切りさえ突破できない場合がほとんどでした。
そのため、初回受験では短答が100点(4520位)(憲法29点、民法42点、刑法29点)と、足切りの108点を大きく下回り不合格となりました。
(2) 2回目受験時の学習状況
初回受験での不合格が6月で確定したため、同月から法科大学院の修了生向けに貸し出された自習室に平日は毎日通い、全ての新司法試験過去問を実際に解いた後に復習する、自分なりの論文対策を始めました。
その傍ら、スタンダード論文答練スタート(以下、「スタ論スタート」。)を受講し、実際に答案を書くという自分にとって圧倒的に不足していた訓練を定期的に積むだけでなく、辰已専任講師の福田俊彦先生から後述する短答対策の具体的な方法も教わることができました。
それらを9月一杯まで実践したため、10月以降のスタ論では50点以上とる頻度が増えたり、スタ短でも足切りの点数は必ず越えるようになったりと、前年度から成長しているという手応えは感じられました。
しかし、2回目の受験では短答成績が118点(2758位)(憲法37点、民法55点、刑法26点)と足切りの108点は超えられましたが、その短答成績が論文成績(1541位)の足を引っ張る形となってしまい、総合順位1644位と不合格に終わりました。
(3) 3回目受験時の学習状況
9月の合格発表までは、自習も辰已講座も前年度と同じ状態で過ごしていました。しかし、2回目受験の総合成績から、2回目不合格の要因も初回と同じく短答成績にあったこと、仮に短答成績がもう少し良ければ論文成績を賄い合格も十分可能だったことが分かってからは、自習内容を大きく見直しました。
具体的には、答練以外で実際に答案を書くことや、過去問の検討は一切せず、自習時間は全て論証暗記と短答対策に費やしました。
そのため、3回目の受験では短答成績が154点(53位)(憲法44点、民法66点、刑法44点)と足切りの108点を大きく越え、論文成績(985位)も合わせ、総合順位815位で合格するに至りました。
4 辰已講座による受験対策
(1) スタ論・スタ論スタート・全国模試
答練はあくまで実践練習の場であって知識習得の場ではないため、各答練でしっかり答案に書けるよう、当該科目の論証、判例等の知識を自分の中で整理しておくよう心掛けました。
そして、初回受験時は返却答案の点数だけ見て一喜一憂するだけでしたが、2回目受験時以降は解き終えてからの行動を大きく変更しました。具体的には、解き終わってすぐ解説冊子の採点表で論点を確認しつつ自己採点をし、知らない論点があれば当該科目の論証集の空きページにその論証を書き込み、毎日の暗記作業に組み込むようにしました。
加えて、答案が帰って来た後は点数と自己採点を比較し、自己採点通りの点数を得られていなかった場合は復習をしたり、暗記している論証を修正したりしました。
そのため、答練の回数を重ねるにつれ、何を書いて良いか分からなかった又は時間が足りず書き足りなかったせいで点数を得られないことは少なくなり、答案を自分なりに内容も充実させ時間内に完成させた上で評価やアドバイスをもらえるようになりました。
(2) スタ短・総択
初回受験時は間違った問題を全て復習し時間を浪費していましたが、2回目受験時以降は間違った問題の内、参照過去問の正答率が7割を超えるもののみピックアップし、辰已の「短答過去問パーフェクト」の参照問題の解説にメモしたり線を引いたりと復習の形を大きく変更しました。
そのため、日々の短答対策と同時に短答答練の復習も一挙にこなせるようになりました。
(3) 選択科目集中答練・選択科目スタ論
初回受験時は知識も不十分で、そもそも選択科目の答案を法科大学院の学期末試験以外で書いた経験すら無かったため、答練を受けても点数が10点台ということも多く、知識不足で復習すらもままならない状態でした。
そこで、2回目受験時以降は答練の受け方を大きく変更しました。具体的には、予め問題冊子と解説冊子をもらい、後述する選択科目のテキストと照らし合わせながら出題される論点を勉強し、論証を暗記してから答練に臨むようにしました。そして、答練後の作業は(1)で述べたものと同様ですが、他科目と異なり選択科目にはどうしても多くは時間を割けないため、論証に自己採点通りの点数がもらえていない場合は論証を修正しすぐ暗記し直す作業を徹底しました。
そのため、他教科の勉強時間を圧迫することなく知識経験共に効率的に積み重ねることができ、2回目受験時は61.30点(上位約9%以内)、3回目受験時は57.44点(上位約20%以内)と安定した成績をとれるようになりました。
5 自習による受験対策
(1) 自習時間について
法科大学院修了後は、辰已で講座がある日以外の平日は、法科大学院の自習スペースに毎日通っていました。
具体的には、必ず朝は7時に自習スペースに到着し17時までには帰るようにすることで、途中の休憩を挟んでも8~9時間の勉強時間を平日は確保するようにしました。
(2) 論文対策に関する自習
初回受験時、論文対策は新司法試験過去問を一通り解いたものの論証や知識がまだ不十分だったため、2回目受験時は論証暗記にも力を入れました。しかし、今度は力配分が分からず過去問知識も論証知識も中途半端になってしまい論文成績を伸ばし切れなかったため、失敗を生かし3回目受験時は論証暗記に主眼を置きました。
具体的には、論文対策の自習で使用するのは、1科目につき論証集のみと決め、答練や過去問検討で得た新たな論点も論証の形で書き込み知識を一元化し、赤シートを使い毎日暗記しました。
そのため、1つの科目の勉強で複数のテキストを参照する等の手間が省け、1日で複数科目の論文対策を効率的に進められるようになりました。
(3) 短答対策に関する自習
短答対策は後述の通り、辰已の短答過去問パーフェクトの正答率7割越えの問題のみを、1日3科目1年度毎に、六法全書の条文を参照しつつ回すことを中心に行いました。
そのため、初回受験時にとっていた方法と異なり解くべき問題数が限られ、一巡するのに日数を要さなくなったため、何度も繰り返すことで知識を確実に定着させることができました。
(4) 選択科目に関する自習
選択科目対策では、後述の通り、辰已の「1冊だけで知的財産法」と、選択科目答練の問題冊子を併用しました。
具体的には、答練で出た論点の書かれた辰已テキストのページを見ながら、論証を暗記しつつ答練の問題文を読み直し、どういう形で当該論点が出題されたかを結びつけました。
そのため、選択科目にはどうしてもあまり勉強時間を割けませんが、出題可能性が高い部分だけ答練を基にピックアップすることで、効率的に知識を積み重ねることができました。
6 書籍による受験対策
(1) 「短答過去問パーフェクト」
2回目受験時6月の段階で辰已の「短答過去問パーフェクト」を購入し、福田先生から教わった勉強方法に従い、正答率7割越えの問題のみを条文片手に繰り返し解きました。それでも当初は時間が掛かりましたが、徐々に解説の条文番号を見ずとも条文を探し当てたり、正誤の理由付けを自力で導いたりできるようになりました。
しかし、初回不合格が足切りだったせいで論文成績が分からず自らの論文の技量に自信を持てなかったこともあり、10月以降は論文対策に時間を割き短答対策を疎かにし、それが不合格に繋がってしまいました。
そこで、3回目受験時の10月以降は、短答過去問パーフェクトで上述した勉強方法を3科目共、毎日欠かさずこなしました。また、正答率7割越えの問題を間違わなくなった後は、正答率を問わず全ての問題を繰り返し解くことで、司法試験本番で見たことの無い問題に直面するリスクが最小限になるよう努めました。
そして、誤った問題は解説の重要部分に線を引き、辰已や法科大学院への移動時間を利用し繰り返し読むようにし、これは3回目受験時の司法試験会場でも実践していました。
(2) 「1冊だけで知的財産法」
2回目受験時の8月に「1冊だけで知的財産法」を購入し、初めて本格的に選択科目を勉強しました。
論証や関係判例がよくまとめられている一方、具体的な問題は後半に掲載された司法試験過去問のみのため実践経験を積むには不十分ですが、読むだけで司法試験において必要な知識は網羅できるという意味で、初学者の私には強い味方となってくれました。
ただ、後半の司法試験過去問に付された上位合格者の再現答案が指導者側から色々辛口のコメントがされており、見本とするには不安があったため、実践経験は模範解答をもらえる選択科目集中答練と選択科目スタ論で積み、そこで得た知識を該当論点のページに書き足す形をとりました。
7 自己の反省を踏まえたこれから受験する人へのアドバイス
今回こうして合格体験記を書く機会を頂き自身の経験を文章にする中で、自分がこの3年間いかに偏った勉強方法をとっていたかを改めて実感しました。
特に3回目受験時は答案作成が辰已の答練のみのため、上述した自身の論文対策がアドバイスとして汎用性があるかについては甚だ疑問です。
そのため、私が司法試験受験生にアドバイスできることは、短答対策の重要性についてのみです。なぜなら、私の経験した2回の不合格は、どちらも短答成績に原因があるからです。
確かに、論文(800満点)と短答(175満点)の得点比率から論文対策に比べ短答対策は軽視されがちです。しかし、短答試験では論文試験では問われない知識も多々出題されるため、短答試験のための対策は必ず必要です。しかも、私の2回目受験時の経験によると、短答知識は論文知識よりも少し勉強を疎かにするだけどんどん抜け落ちます。
そこで、私のように論文対策の時間を大幅に削る必要まではありませんが、必ず短答対策の時間を設けることは法科大学院在学生修了生問わず徹底して下さい。
そして、間違っても足切り突破を最終目標には据えないで下さい。短答より論文に自信があるから論文採点に漕ぎ着けられさえすれば良い、前回足切りにあったからとにかくそこを越えたい等の理由で、足切り突破を主眼に据えたくなる気持ちは分かります。
しかし、令和元年司法試験結果から言えば、短答の足切りで不合格とされたのは下位約25%に過ぎず、合格するには上位約30%に入らなければいけませんでした。つまり、短答合格者平均点が129.3点だったことも加味すると、足切り108点を辛うじて超えるくらいでは論文成績で大分上位に入らなければ足りず、最終合格に至れる可能性は限りなく低いということです。
そのため、まだ法科大学院在学生で初回受験がまだの人や、前回が足切りで不合格だった人でも、民法は8割以上、刑法と憲法は7割以上を目指すことが大切です。
また、短答成績が既にそこまで達している人も、間違っても短答対策はある程度目途がついたから今度は論文対策に力を入れるなどということはせず、引き続き短答知識の維持向上に努めることをお勧めします。
辰已法律研究所 受講歴
【2018年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール・選択科目)
・スタ論スタート
・スタンダード短答オープン(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・司法試験 総択
・司法試験全国公開模試
【2017年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール・選択科目)
・スタ論スタート
・スタンダード短答オープン(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・司法試験 総択
・司法試験全国公開模試
【2016年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール・選択科目)
・スタンダード短答オープン(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・司法試験 総択
・司法試験全国公開模試