5年目での合格への道のり
1 司法試験合格までの道のり
私は、今年5回目で司法試験に合格しました。1回目の受験時は、明らかに知識不足でした。論点自体に気付かないことが複数見られました。2回目以降の受験においては、知識不足をある程度補うことができたものの、論述がうまくできず、3回目、4回目と年数を重ねるごとに徐々に精錬していき、ようやく5回目で合格レベルに達することができました。
2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)
私は、未修コースで法科大学院に入学しましたが、それまで予備校等を利用しなかったこともあり、司法試験受験業界のことや著名な教授を全く知りませんでした。そのため、論文の作法はもちろんのこと、法律に関する本はほとんど持ち合わせておらず、どの基本書を読めば良いのかわからない状況でした。また、法科大学院に入学し、真面目に勉強していれば司法試験に合格できるという軽い気持ちでいました。そのため、法科大学院から授業で使用する教材の案内を受けるまでの間、何もせずに過ごしていました。
3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)
2.の状況の通りでしたので、法科大学院入学後の私は、悲惨な状況でした。1年次と2年次は、日々の授業の予習をするのでいっぱいになり、復習をするのは期末試験前に試験対策としてするのがやっとでした。おかげで、法科大学院の成績は、なんとか上位を維持できたものの、本格的に本試験対策に取り掛かったのは、3年次に入った頃でした。
4 受験対策としての、辰已講座の利用方法とその成果
(1) スタ論本コース
私は、スタ論本コースを2回受講しました。1回目は、法科大学院3年次、すなわち1回目の本試験時でした。当時の私は、上記の通り、まだまだ知識が不足しておりました。そこで、スタ論の問題を、解説講義や解説冊子を読むことによって知識不足を補っておりました。刑訴の捜査法は、大部分をスタ論の問題によって知ることができ、助けられたと思います。
2回目は、今回の5回目の本試験時です。もちろん、最後の本試験でしたので、後悔のないよう、受講しました。スタ論は、全日程の答練を受けるだけでも大変ですが、その後の解説講義や復習をするとなると、勉強時間の大部分を使うことになります。3回目の司法試験の結果から司法試験合格に必要な知識はある程度備わっていると自覚していましたので、1回目のように知識を補充する使い方ではなく、論文を書く練習として使いました。そのため、復習も解説講義を聞いて、返却された答案の添削内容を軽くチェックし、論述面で何が問題であったかを確認するのみで、解説冊子はほとんど読みませんでした。また、答練時は、論述が綺麗に書けたかどうか、何枚書いたかどうか、途中答案にならなかったかどうかを意識して受けていました。
スタ論を選んだ理由は、受講者数が多いことから司法試験受験者全体の中から自分の順位を予想できるとともに、問題の質に定評があり、点数配分も比較的細分化されていることから、添削者による恣意が相当程度排除されており、採点が客観的に信頼できることにありました。
(2) 全国模試
全国模試は、毎年受けておりました(計5回)。本試験と同じ会場、同じスケジュールで受験することができますので、私は、本試験をどのように過ごすのかシミュレーションするために使用していました。机や椅子は、本試験とほぼ同じものです。持参する鞄、乗る電車の乗車場所、休憩時間の過ごし方を確認し、飲み物や食べ物の種類も、本試験で何を持参するかを基準として厳選しました。そのため、全国模試の結果は、毎年あまり良くありませんでしたが、全く気にしませんでした。しかし、おかげで本試験は、毎年、全国模試のときと同じ様にすることで、問題以外の余計なことに意識を割かなくて済みました。司法試験を受験されたことがない方は、全国模試だけは受講することをお勧めします。特に、普段1人で勉強される方は、隣に人がいることの煩わしさを体感でき、非常に有用だと思います。
5 私がやって成功した方法等
私は、普段から本試験を意識して勉強をしていました。日常使用する六法は、司法試験用六法を使用していました。司法試験用六法は、一般的な小型六法と大きさ、掲載法令の順序が異なるなど癖があります。そのため、それに慣れることは、特に条文数の多い科目において非常に有用でした。
また、論文演習は、PCを使用せず、必ずボールペンを使用し、時間を厳密に計って解くようにしていました。本試験会場では、PCの使用は、休憩時間も含めてできません。更に、本試験で使用できる筆記具は、ボールペンと万年筆とされています。私は、論文を書く速度が遅い方でしたので、実際にボールペンで書くことによって、書く速度を多少向上させることもできました。論文演習は、時間を計って解くかどうかによって、論述の精度が大きく変化すると思います。本番で発揮できない方法は無意味だと思いましたので、時間を計って解き、途中答案になったときや、論述が綺麗にできなかったときには、問題点を分析し改善していきました。
6 使用した本
(1) 基本書
本年度は、下記(2)の判例集を中心に勉強していたのであまり使用しませんでしたが、日本評論社の基本シリーズ(刑法総論、刑法各論、行政法、憲法)を重宝し、毎年各科目を必ず一度は通読していました。
(2) 判例集
全科目で、判例百選を使用しました。憲法に限っては、判例百選だけでは足りませんが、それ以外の科目は判例百選をしっかりやれば、本試験に十分対応できると思います。もちろん、事案の概要と判旨だけでは不十分です。解説もしっかり熟読する必要があります(ただし、一部の科目を除きます)。インプットは、判例百選を中心に行いました。私は、暗記が得意ではありませんでしたので、判例の規範を覚えることが苦手でした。しかし、判例百選では、なぜその判例が重要な意味を有するのか、どういう背景からそのような判例が生まれ、またそのことによって、その後の判例がどういう方向を示したのかを関連論点と絡めながら学習することができました。そのため、暗記の苦手な私でも、比較的判例の規範や文言を覚えることができました。
(3) 肢別本(辰已)
短答式試験対策は、条文を素読する以外、肢別本しか使用しませんでした。肢別本は、肢ごとに問題と解説が用意されており、問題は旧試を含めた司法試験や予備試験の過去問という最良の問題であることと、1肢からできる手軽さがあり、電車の移動時間中に使用していました。また、今年は評判を聞いて、アプリ版も購入したため、満員電車の中でもスマホで快適に勉強することができました。現在肢別本を所有していないのでしたら、アプリ版の購入をお勧めします。
肢別本(アプリ)の正答率を高めることができれば、短答式試験で落ちることは、まずないと思います。
(3) まとめノート
私は、オリジナルのまとめノートを作成せず、辰已から出版されている趣旨規範ハンドブック(以下「趣旨規範本」という。)を使用しました。その理由は、まとめノートを作成する時間が惜しいことと、趣旨規範本以上のボリュームになると短時間で回すことができないと考えたからです。趣旨規範本は内容が薄いと思われがちですが、それでも相当量のページ数あります。私は、趣旨規範本を本試験直前及び当日の休憩時間等の知識の確認に使用したかったので、重要な論点のみ記載のある趣旨規範本は大変重宝していました。もちろん、趣旨規範本の中でも、規範に対する理由付けが足りないと考えたものや、自分の不得意分野については、手書きで付け加えたりしました。
7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
(1) 自己の反省及びLS在学生へのアドバイス
まず、私が合格まで5回の受験を要したのは、法科大学院の授業において、主に本試験の出題範囲に含まれない科目も、基本科目と同様に、臨んでいたことにあると思います。当時は、奨学金の取得のためGPAを上げるために取り組んでいましたが、結果、要領が悪く、本試験対策を開始するのが遅れました。また、週末は、生活のためアルバイトをしていたこともあり、本試験対策の勉強時間を十分に確保できなかったことも、合格が遅れた理由だと思います。
法科大学院の成績も、法律事務所の就職活動の際に評価対象とされますので重要ですが、それ以上に、司法試験に合格することが、みなさんの直近の目標のはずです。そのため、決断に勇気がいるかもしれませんが、取捨選択をして、本試験までの有限の時間を有効に活用できるよう工夫してください。本試験は、例年、1回目受験の方が、最も合格者数が多いので、きちんと勉強すればきっと合格できます。
ご健闘をお祈りしております。
(2) 来年のリベンジ合格を目指して
今年の本試験を受験された方は、既に結果が返却されてきていると思います。まずは、ご自身の成績結果から目を背けないでください。
短答式試験で落ちるなどインプット面に問題がある場合は、厳しい言い方になりますが、勉強時間が不足していると思われます。勉強スケジュールを見直して、勉強時間を今まで以上に確保してください。
そして、ほとんどの方は、アウトプット(論述)に問題があると思われます。司法試験は、知識が多少不正確でも、論述がしっかりしていれば点数が入ります。自分の論述のどの部分が弱いか分析して、改善するために時間を割いてください。この点については、ご自身で解決することが難しいかもしれませんので、合格者やゼミの仲間にアドバイスを求めてください。また、近年の本試験は、基本的な事項を問われることが多くなってきています。改めて、基本的な知識がきちんと定着して正確な論述をすることができるか確認してください。来年の本試験は、悔いの残らないよう頑張ってください。
ご健闘をお祈りしております。
辰已法律研究所 受講歴
【2019年対策】
・スタンダード論文答練
・司法試験全国公開模試
【2018年対策】
・司法試験全国公開模試
【2017年対策】
・司法試験全国公開模試
【2016年対策】
・司法試験全国公開模試
【2015年対策】
・スタンダード論文答練
・司法試験全国公開模試