労働法の一勉強法
1 労働法を選択した理由
私が労働法を選択した理由は、消極的なものです。予備試験受験後は、まさか受かっているとは思いもせず、選択科目について考えていませんでした。そのため、予備試験合格後に慌てて選択科目を選びましたが、司法試験本番にまで時間がなかったこともあり、自ずと選択肢が限られていました。そして、予備試験前に大学で労働法(集団的労使関係法のみだが)の授業を受講しており、学習していてあまり苦に感じなかったことから、労働法を選択科目として決定しました。結果的には、労働法を選択してよかったと思っています。
2 労働法のメリットとデメリット
まず、労働法のデメリットとして学習範囲が多いことがよく挙げられています。いくつかの合格体験記にもそのようなことが書かれており、私が選択科目を選ぶ際にも、そのことが若干の不安でした。ただ、個人的にはそれは杞憂に終わったのではないかと思います。と、言いますのも、私にとっては労働法の範囲がとりわけ多いとは感じませんでした。他の選択科目の学習範囲がどれほどなのかは分かりませんが、少なくとも基本7科目のいずれよりも学習範囲は少ないように思います(あくまでも個人的な感覚です)。
私にとっては、むしろ労働法を選択するメリットしか思いつきません。まず、市場に多くの概説書、演習書が出回っており、独学でも取り組みやすい科目であると思います。また、多くの大学で労働法の授業があると思いますので、大学生にとっても学部生時代から学べる科目となっています。その他、私は利用しませんでしたが、予備校でも労働法対策講座が多くあるようですので、どのような立場の方でも学びやすい科目ではないかと思います。
また、受験生の数が多く、答練などを利用しても相対的な位置を把握しやすい科目であるように思います。
さらに、労働法の試験問題では、労働契約をいかに解釈すべきか、といった問題が出されることがありますが、これは、民法での契約解釈の考え方の延長に位置づけられます。また、憲法の私人間効力で有名な三菱樹脂事件判決(最大判昭和48・12・12民集27巻11号1536頁)も労働法では重要判例として登場します。このように、基本7科目と労働法とは関連しています。たとえば、予備試験合格者のように基本7科目に関する知識が十分備わっているような方は、労働法にすぐ対応できるのではないかと思います。
3 予備試験合格後の学習状況
予備試験合格前に大学で集団的労使関係法の授業を受講しており、この分野に関しては、その授業で学んだ内容がかなり役に立ちました。
ただ、個別的労働関係法に関しては触れてこなかったため、予備試験合格後から慌てて対策を開始しました。予備校の講座を受講することも考えましたが、インプットをしている時間がないと思い、独学で行けるところまで行こうと決心しました。対策としては、問題をたくさん解いていく中で判例や基本的な概念をインプットしつつ、過去問でアウトプットしていこうと考えていました。
4 労働法の攻略法、使用した本
まずは、演習書(水町勇一郎=緒方桂子編『事例演習労働法〔第3版補訂版〕』(有斐閣、2019))を解き、解説を読み、分からない点については判例集や概説書(菅野和夫『労働法〔第12版〕』(弘文堂、2019))で逐一確認しました。演習書は、最終的に3~5周ほどしました。
そして、問題演習でよく出てくる概念や判例をまとめノートに書き込みました。最初、まとめノートを一から作ろうともしましたが、時間がなかったので、辰已から出版されている『一冊だけで労働法〔改訂版〕』をまとめノートとして使用しました。この本は、重要判例の要点がまとまっているので重宝しました。
また、年明けからは、過去問に取り組みました。その際には、『一冊だけで労働法〔改訂版〕』に載っている再現答案を参考にしつつ、出題趣旨や採点実感を基に答案を自分で評価しました。
以上の学習方法を試験本番まで繰り返しました。
5 私が利用した辰已の講座
選択科目対策としては、スタンダード論文答練(スタ論)と全国模試を受講しました。
私は、ほぼ独学で労働法を学習していたこともあり、勉強の方向性に若干の不安がありました。ただ、辰已の答練で2回程労働法の添削を受けたことで、勉強の方向性を修正することができました。演習書などでよく問われる問題がスタ論で出題されたときには、それなりの点数が取れ、添削者からのコメントも概ね良好でした。ただ、理解が乏しい論点からの出題では、あまりいい点数を取れませんでした。スタ論を受講したことによって、労働法全体の理解を一段と深めていく必要があると分かり、勉強の方向性を修正できました。そして、その後に受けた全国模試では、労働法でAランクを取ることができ、本番に向けて自信を深めることができました。
6 これから受験する方へのアドバイス
初学者は、8科目ある選択科目のうち、なるべく多くの科目に触れたほうがいいと思います。そして、自分に肌が合う科目を選択することをお勧めします。その際には、いくつかの選ぶ基準があると思いますが、自分が納得のいく基準で選べばいいのではないかと思います。そして、選択科目を選び、願書に記入したら、本番までただ勉強するのみです。
次回受験する方へのアドバイスとして、何を選択するにせよ、司法試験に合格する上で、選択科目はかなり重要な科目であるということができると思います。それは、全体的にみて基本7科目ほどの対策ができている受験生が少ないと思われること、一番最初の受験科目であること、問題が2題出題されることなどが理由です。
受験生の対策が進んでいないということは、反対に誰もが、頭一つ抜け出せる可能性があることを指すと思います。それなりの時間をかけて準備すれば、他の受験生より優位に立てることは間違いないです。また、4日間の試験の一番最初の試験科目でもありますが、ここで良いスタートが切れると、その後の論文7科目、短答式試験にもいい影響を与えることができるはずです。
そして、選択科目は、問題が2題出題され、答案用紙も2枚配られます。仮に、第1問の問題に上手く答えられなくても、第2問では全く異なる問題が出題されるはずですから、頭と気持ちをリセットして問題に取り掛かることができます。これは、他の論文式試験と大分異なる点だと思います。
このように、選択科目は、司法試験を受験する上で大変重要な科目でありますので、手を抜かずに勉強してほしいと思います。
辰已法律研究所 受講歴
・スタンダード論文答練
・全国模試