「正しい」努力は必ず報われます!
第1、初めに
私が司法試験の受験を決めたのは、中学生の頃、ある二つのTVドラマをきっかけに法曹になろうと決めたことにあります。
この合格体験記というのは一個人の経験談であり、受験生に一般化できるものではありません。どの勉強方法を選択する際にも大事なのは、合格のためには自分に何が足りていないかを常に分析し、その足りない部分を補うことを意識することであると思います。勉強方法について悩まれている受験生にとってこの合格体験記が少しでも参考になれば幸いです。
第2、経歴等
2018年3月 明治大学法学部法律学科 卒業
2018年4月 明治大学法科大学院(既修) 入学
2020年3月 同大学法科大学院 卒業
2020年8月 国家公務員総合職試験 合格
2021年1月 令和2年司法試験 論文不合格
2021年9月 令和3年司法試験 最終合格
第3、初学者段階の勉強方法
私が法律を始めて学んだのは大学に入学してからのことです。その頃は、違う言語を学んでいるような感覚で、どのように学習すればよいか手探り状態でした。今振り返ってみると、私が役に立ったと思うのは当該科目の全体を概観できるような勉強方法を取ったことです。具体的には辰已法律研究所の初学者向けの基礎講座を受講しました。この講座は初学者がつまずきやすいポイントを押さえた講義でとても分かりやすい講義となっていました。もっとも、どの予備校の入門講義や薄めの入門書等でも自分に合っている講義・読みやすい入門書であればなんでも良いと思います。とにかく初学者段階では細かいところは気にせず、一度全体像をつかむことが大事だと思います。また、初学者段階でありがちな分厚い基本書の通読は、難しく途中で心が折れるのであまりお勧めはしません。
第4、短答の勉強方法
私が採った短答の勉強方法は過去問をひたすら解くということです。シンプルですがこれに尽きると思います。使用した教材は辰已法律研究所の肢別本です。理由は網羅的であること、解説がシンプルであること、過去問の肢が体系的に並び替えられていることです。
また、通学時間などのスキマ時間にも簡単に勉強できるように肢別本のスマホアプリを利用したりしました。重い本を持ち運びする必要がなく、スマホを取り出しサッと勉強を始められるのでとても便利だと思います。もっとも、肢別本だけですと本番の形式に対応できないと考えたので、その点は模試等を利用してカバーしました。
過去問を解くときに心がけたのは単にその肢の正誤を確認するだけでなく、なぜそうなるのかという理由を意識しながら解いたことです。こうすることで、肢の事案が変わっても正誤を判断できるようになりました。
私が短答の勉強に本格的に着手したのは司法試験の1年前くらいでした。今振り返ってみると、初学者段階の勉強を終えた時点ですぐに着手すべきであったと思います。
第5、論文の勉強方法
まず一つは、参考答案付の問題集をひたすら読むという勉強法です。この勉強方法は論文の勉強を始めてから合格直前まで続けてきました。
1~2周目は事案と設問に目を通し、すぐに参考答案を読みます。ここでは、答案の内容を理解することではなく、答案の流れを掴むこと意識しました。そうすることで、そもそも何をどのように書けばよいのかということを何となく分かるようになりました。3~6周目は問題を読んだ後にどのようなことが書いてあったかを思い出しながら頭の中で答案構成をした後、参考答案を読みます。答案を読む際は、各周ごとに規範・理由付け・あてはめ・問題提起に着目し色別にラインマーカーを引いていくなど、答案を分析していきました。こうすることで、1~2周目と異なり、問題文のどの事実が重要なのかがわかるようになっていきました。そして、7週目以降になって初めて、問題文→答案構成→参考答案を読んだ後に解説を読みました。これまでの繰り返し読んできた中で、わからない論点など気になった点を解消していき、解説だけではわからない部分は基本書等を調べたりしました。この段階で基本書を読んでみると、初学者段階と異なり、論文に大事な所やどのように論文に書けばよいか等を意識しながら読むことができたと思います。
私が感じたこの勉強方法のメリットは早く問題集を1周できることです。問題集を頭からじっくりやっていくとどうしても途中で挫折したり、初めに覚えたことはすっかり忘れてしまったりすると思います。しかし、この勉強方法を採ったことで何周もすることができ、さらに各論点のつながりも意識しながら勉強することができました。また、答案構成も行うので、インプットを兼ねつつアウトプットもできるということにメリットがありました。
2つ目はやはり過去問を解くということです。ここでは一つ目の勉強では補えないフルスケールの答案を書くための時間配分やメリハリをつけた論述など本番を意識した学習をしました。また、出題趣旨・採点実感等を用いて何をどの程度書けばよいのかを分析しました。
そして、以上の勉強をしてきた中で重要な点等を科目ごとに1冊にまとめた物を作成しました。私は作成にあたって、辰已の趣旨規範ハンドブックを利用しました。もっとも、このまま使用するのではなく、自分用に加筆修正しカスタマイズして使いました。加筆修正がしやすいようにリングファイルに閉じていました。まとめ本を作成したことで、直前期に無駄に手を広げず、今までやってきたことをざっと復習できたのでとても役に立ったと思います。
第6、一度目の敗因分析
第2にある通り、私は一度司法試験に論文で不合格となっています。私はその不合格の原因は暗記すべき規範や論証を蔑ろにしすぎた点にあると考えました。実際に再現答案を見ていただいた合格者や補助講師の先生にも同様の指摘を受けました。私は暗記作業がとても苦手で眠くなってしまう性格で、ちゃんと時間を割かずに避けてきました。本番でも、基本的な規範を書けずに途中答案となってしまう科目がいくつかありました。そこで、上記の勉強に加えて、しっかりと暗記の時間を取りました。そうしたところ、2回目の本番では前回と異なり、基本的な規範などでつまずくことなく答案を書ききることができたと思います。
不合格の原因は人によって異なりますが、自分が苦手としている勉強は気づくと避けがちになることが多いと思います。敗因分析をされる方は、自分が苦手としている・避けている勉強は何かという観点から探ってみるのも一つの手段だと思います。
第7、使用した本
1、短答対策
(1) 肢別本および肢別本アプリ 憲法・民法・刑法〔辰已法律研究所〕
(2) 判例六法〔有斐閣〕
2、論文対策
(1) えんしゅう本 民法・商法・民事訴訟法〔辰已法律研究所〕
(2) 合格思考憲法〔辰已法律研究所〕
(3) 事例研究行政法〔日本評論社〕
(4) 応用刑法 大塚裕史〔法学セミナー連載〕
(5) 事例演習刑事訴訟法 古江頼隆〔有斐閣〕
(6) 趣旨規範ハンドブック〔辰已法律研究所〕
第8、終わりに
初めにも書きましたが、以上の勉強方法はあくまで私の経験談に過ぎず、これを読んでくださった受験生の方に広く通用するものではありません。勉強方法は百人いれば百通りあるものであり唯一の正解はありません。もっとも、どんな勉強方法も司法試験合格というゴールから逆算した上で、どういう意図をもって勉強したかでその成果は大きく変わると思います。単に過去問や問題集を解く、基本書・判例を読むだけではなく、合格に向けて自分に必要なもの・足りないものは何か、そしてそれを習得するために当該勉強方法を採っているという意識を常に持って勉強に臨んで欲しいと思います。
「正しい」努力は必ず報われます!受験生の皆さん、頑張ってください!