それぞれの勉強スタイルを確立し、受かるための勉強を受かるために必要な量を妥協せずにやる。
1 司法試験の受験を決意した経緯
高校時代から法曹という仕事に興味を持ち、大学は法学部に進学しました。大学時代に所属した法律相談部では、活動を通じてたくさんの弁護士と関わる機会をいただき、法曹実務をより身近に感じることができました。そのような中で、法曹になりたいという思いが強くなり、法科大学院への進学、及び司法試験の受験を考えました。
2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)
法科大学院を受験するまでは、主に大学の講義を中心に、基本書や問題集を使いながら自学自習するというスタイルで勉強していました。私が受験した神戸大学法科大学院の「3年次特別枠」の受験科目が憲法・民法・刑法・会社法の4科目であったため、入試までひたすらこの4科目を徹底的に勉強しました。他方で、民事訴訟法や刑事訴訟法といった手続法については、やや勉強が追い付いていないというのが正直なところであったため、入試後、法科大学院入学までの間にひたすら手続法を詰め込みました。
3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)
法科大学院に入学してからは、講義を中心に勉強をし、友人と自主ゼミを複数組むなどして予復習に努めました。この頃組んでいたゼミでは、「期末試験過去問を定期的に解いて答案を共有し議論をする」というスタイルで勉強をし、徐々に答案の型をつかんでいくとともに、アウトプットを通じて知識のインプットを図ることを意識しました。既修1年目の前期は期末試験対策が中心で、後期から少しずつ司法試験の過去問に触れていくというスタイルで勉強していました。
4 受験対策
(1) 辰已の講座を利用して
ア スタ論第2クール
私は、直前期の1月末から始まる「スタ論第2クール」を受講しました。この講座では、週に1回辰已の大阪校に通い、その場で時間を計って問題を解き、解答・解説をもらってすぐに復習するという形で利用していました。
まず、形式面では、この講座の受講を通じて、公法系、民事系、刑事系、選択科目のそれぞれについて、答案構成の時間や2時間で書ける最大枚数等を分析していくことができ、初見の問題を時間内に解ききるということに対する抵抗を無くすことができました。
次に、内容面については、毎回、司法試験の過去問や司法試験員の先生方の分析に基づいた、精選された問題を解くことができました。解説冊子についても分かりやすく記載されており、わからなかった問題の答案例は何度も見直して、使えるものはそのまま覚えてしまうなどして自分のものにしていきました。また答案の添削についてもご丁寧なコメントをいただき、できている部分とそうでない部分を自分の中で明確に把握することができました。さらに、添削後は、公法系、民事系、刑事系それぞれについて受講者内における順位と偏差値を算出していただき、個人的には、これによって、自信となった科目と勉強の足りない科目、高得点を狙える科目と無難に一応の水準に落ち着かせる科目を把握することができ、司法試験に挑む際の作戦や計画を立てることができました。
イ 全国公開模試
上記のスタ論第2クールを経て、3月末~4月頭にかけて行われた、全国公開模試を受験しました。ここでは、辰已の答練や自主ゼミ等の日々の自学自習を経て、自分の答案が全国的レベルでどの程度評価されるのかを知ることができました。特に、出来の良かった科目については自信につながるとともに、出来の悪かった科目についても、「これだけミスをしてもそこまで沈まないのか」とか、「やっぱり他の受験生も解けないよね」といった自分なりの感覚や相場観を知ることができ、とても貴重な機会となりました。このとき得た「相場観」が、司法試験当日にも冷静な自分を維持することができた要因であり、「自分が分からない問題はきっと他の受験生もわからない」という思考の下、特段メンタルブレイクすることなく乗り切ることができたと思います。
(2) 成功した勉強法
私がやってよかったと思う勉強方法は、①まとめノートの作成、②自主ゼミを通じた答案のブラッシュアップ、③友人との答案共有です。
まず、①については、法科大学院入学後から作り始めました。試行錯誤しながらではありますが、自分にとってわかりやすいノートを目指しました。まとめノートの作成に際しては、「これだけ見れば司法試験に合格できるノート」をコンセプトとし、作成が目的ではないのだと何度も自分に言い聞かせながら作成しました。これにより、毎回の講義の吸収率が高まり、知識の積み上げを図ることができたとともに、直前期の頭の整理にも活用することができました。
次に、②については、自主ゼミを通じて答案上の表現ぶりや書き方を固めていき、答案をブラッシュアップしていくことができました。「わからない部分はできる友人と同じように書く」ことを意識した結果、答案上どう書くか、について迷いが生じることは少なくなりました。また、これにより、各論点や問題状況についての思考の整理にも役立つことができました。
最後に③については、既修2年目の後期くらいから、公法系が得意な友人や労働法選択の友人数名と答案を共有し、互いにコメントするというスタイルの勉強法を確立しました。これにより、答案やコメントを通じて友人の答案を参考にすることができ、メリットが大きい勉強法であったと思います。特に、コロナ禍で直接会う機会が減ったこともあり、オンライン上のつながりによって、同じ方向を向いて頑張ることに対する「見えない友情」みたいなものが芽生えた気がします(笑)
(3) 私が使用した書籍(辰已)
ア 趣旨規範ハンドブック
各科目の論点やそれぞれの趣旨・規範が網羅的に記載されています。勉強をしていて論点漏れ等があった場合には、趣旨規範ハンドブックで確認するようにしていました。私は、前述のようにまとめノートを作成していましたが、その際にも趣旨規範ハンドブックの記載を参考にし、まとめノートに盛り込むことが多々ありました。とても使い勝手の良い書籍だと思います。
イ 短答式パーフェクト
短答対策については、各科目とも短答式パーフェクトを購入し、ひたすら過去問をまわしました。平成18年度から令和2年度までの司法試験・予備試験の過去問がすべて載っているので、この1冊をひたすら回せば安心という感覚でとにかく回しました。
ウ 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本
司法試験過去問の解説と参考答案が複数掲載されています。自主ゼミで司法試験過去問を扱う際には、この本をベースに復習していました。答案構成や解答のポイント等、全体を通して解説が充実しているため、とても使いやすい書籍でした。また、合格者の参考答案が複数載っているため、それぞれを比較検討しながら、自分に合った参考答案をベースに答案のブラッシュアップにも役立ちました。
5 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
(1) LS在学生へのアドバイス(在学中にやっておくべきことなど)
司法試験対策における私の反省点は、①まとめノートの完成が遅くなったこと、及び②短答対策が遅くなったことです。
まず、まとめノートについては、完成してから何度も繰り返し見て、使うことが目的なので、「繰り返し見て使う」ための期間を長く設定すべきです。できれば3月の全国模試の段階で知識が収束している状態が理想なので、もしまとめノートを作成されている方がいれば、年内、遅くとも1月くらいには終わらせて、知識の収束期間に入っていくのがベストだと思います。
次に、短答対策については、2パターンあると考えています。すなわち、直前に詰め込む短期集中型と長期的継続的に知識の習得を図る長期継続型の2つです。これは質タイプと量タイプにも分けられるかもしれませんが、私の場合は後者でした。直前期の3月~4月にかけては論文のブラッシュアップをメインにしていく受験生が多いと思うので、最後は論文対策に時間を割くことが理想であるというのが個人的な感想です。しかしながら、私が実際に短答の問題集を1周し終えたのは3月頃で、最後まで短答対策にある程度の時間を割かざるを得なかったので、もっと余裕をもって短答対策をしておくべきであったと考えています。
勉強方法は人それぞれなので、ご自身に合った方法で司法試験合格を勝ち取ることが大切です。その上で、もし私のような勉強スタイルの方がおりましたら、まとめノートや短答対策について、少しでも参考になれば嬉しいです。
(2) 来年初めて受験する方へのアドバイス
ア 試験当日までの過ごし方
勉強面では、最後はこれまで発散した知識を収束する作業になっていくと思います。最後の最後、これまで学んだ知識を整理して答案に落とし込める状態でなければ、「あそこに書いてあったけど何だっけ…」というように、試験本番に悔しい思いをされるかもしれません。ですので、最後はとにかくこれまで勉強した知識・論点を自分なりに収束して整理することが重要だと思います。もしも、そもそも知識の量・幅が足りていないと思われる方がおられたら、その方は今現在自分の有している知識の量や幅の範囲で整理するという視点も持つと良いのではないかと思います。知識が足りていないと焦るお気持ちも大変よくわかるのですが、今ある知識を確実に答案に落とし込めるようにするという視点も大切にされると良いと思います。
精神面では、最後はこれまで並々ならぬ努力を重ねてきたという自信が、ご自身にとても良い影響を与えてくれると思います。最後はメンタルです。自信を持ってください!
イ 試験当日の過ごし方
私がお伝えしたいことは、「試験当日は余計な感情に流されず淡々と5日間を乗り切ることが大切である」ということです。
試験当日は、わからない問題が出た時の焦り、時間配分を間違ってしまった時の焦り、書き始めてから気付いた答案構成のミス等、想定外のことが起こり得るもので、5日間のうち少なくとも1度くらいは「不安」や「焦り」といった感情が生じると思います。そして、このようなマイナスの感情は、試験答案にも表れてしまうものです。ですので、試験当日は、これらの感情が出てくることは当然と考え、その場合にどのような心持ちで過ごすかを予め考えておくのが良いと思います。ちなみに私の場合は、①ひたすら問題文と向き合う、②わからない論点は適当に規範を立てて何も考えず事実を拾って評価する、③三段論法だけは崩さない、の3つを意識していました。
あなたが分からない問題は、おそらく他の受験生も分かっていません。ご自身がこれまで積み重ねられた努力を信じて、最後までやりきることが司法試験の合格につながると思います。皆様の合格を心より願っております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
辰已法律研究所 受講歴
【2020年対策】
・スタンダード論文答練(第2クール)
・司法試験全国公開模試