司法試験

三段論法の探究

M.Oさん
受験歴: 1回
大阪大学法学部法学科
大阪大学法科大学院【既修】2021年入学
【受講歴】スタンダード論文答練1C2C 全国公開模試 他
2023年度

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 私が本格的に司法試験受験勉強を始めたのは大学3年生の6月からです。実は、家族のすすめで、大学1年生の秋に他予備校の入門講座を受講したのですが、当時、大学の授業に慣れるのが精いっぱいだったので、何を受講したのかよくわからないまま終わってしまいました。大学2年生は、サークルやバイトで忙しく、法律の勉強は学部の期末試験以外、全くしていませんでした。大学3年生になって、公務員試験を受けようと思い、前述の予備校にて公務員講座を一部受講もしていたのですが、その中で、司法試験を達成できない自分に未練があることを自覚したことから、結局前述の予備校にて新たに入門講座を受けることになりました。

2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)

大学3年生の6月に新たに入門講座を受け直してから大学4年生の2月までは、順調に受講を進めることができ、入門講座を終えることができました。どの予備校であっても入門講座は教材も授業時間も多く、大変だと思いますが、とにかく1周、受け切ることが司法試験への第1関門かと思います。

 しかし、大学4年の3月あたりから、コロナ禍になり、いつものルーティンが崩れてしまったため、勉強が思うように進められなくなりました。そのため、本来は入門講座の続きの論文講座に移る時期なのですが、ほとんど進められず、結局ほぼ入門講座の知識のみで院試を受けるはめになりました。ロー入試は、関学ロー(既修)、阪大ロー(既修)と神大ロー(既修)を受け、阪大ローに追加合格、関学ロー・神大ローに合格し、学部から通っていた阪大ローに進学することに決めました。私は、運よく志望していたローに合格しましたが、通常は、ロー入試前に論文講座まで受講されている方が多いと思うので、ロー入試前までに最低でも入門講座を1周する、出来れば論文講座も受け切り、答案を書く練習をしておくと、安心してロー入試に臨めるかと思います。

3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)

ロー2年

 追加合格ですし、やはり論文の書き方が備わっていないからか、授業を聴くのが精いっぱいでした。そのため、ローでやっていた勉強は、授業の準備と授業を聴くこと、期末試験の勉強をするのみで、短答や論文の勉強を始めることすらできませんでした。ですが、春休みに辰已のWEB相談を申込み、アドバイスを受けた結果、全国模試と、福田先生の論文合格塾、予備試験のスタ論第2クールを受けることにしました。福田先生の論文合格塾は、良い意味で予習もハードルが低く、講義では「これは書けないといけない」部分を明確に教えてくださるので、すごくありがたかったです。そして、福田先生の講義を受けた後は、全国模試や予備試験のスタ論で、習ったことを試してみるようにしていました。とはいっても、当時の私はローの授業の知識と司法試験に必要な知識のすみ分けもできていなかったので、点数は散々でしたが、「とりあえず自信をもって書いてみる」ことを実践できたのはとても良かったと思います。

ロー3年

 ロー3年になってからは、授業の負担は少なくなったと思います。しかしながら、司法試験のための勉強はできていなかったです。なぜなら、何から始めればよいのか全くわからず、色々「やってみた」だけになっていたからです。また、司法試験のための勉強が進まなかったもう1つの理由として、ロー3年から急遽選択科目を労働法から倒産法に変更することになり、その勉強に追われていた(本多先生の講義にもお世話になりました)のもあります。

ですが、辰已のスタ論第1クール・第2クールは受けていて、点数はさておき、答案を書く練習をすることは出来ていたと思います。

4 法科大学院修了後、司法試験当日までの勉強

短答対策

ロー修了後の3月は、丸1か月全て短答にあてるようにしました。やり方は、短答過去問パーフェクトを用いて、短答過去問の選択肢を解答と共に「理解する」方法です。「理解する」際には、該当条文をその場で引き、判例がある場合にはその判例判旨を読むことも行いました。これにより、論文式試験にも出題されそうな論点の理解にもつながったかと思います。また、短答知識が蓄えられた直前期は、短答過去問を軽く1周解き、「解く感覚」を身に付けました。例えば、民法では2択まで絞れた時にどういう思考をたどって正解を選ぶのか、憲法では答えを出すのに考えすぎない練習(憲法は元々の問題が難しいため、考えすぎると間違う危険性がある)、刑法では苦手だった文章問題の解き方を自分なりに研究する練習をしていました。その甲斐あってか、本番では133点(憲法30点、民法59点、刑法44点)をとることができ、短答で足を引っ張る結果にはならなくてよかったと思いました。

論文対策

 ロー3年の期末試験が終わった2月から、いよいよスタ論で点数を取れるように本腰を入れて勉強しようと思うようになり、趣旨規範ハンドブックの暗記を始めていました。しかし、形式的な「暗記」をしていたせいで、第2クールも点数は伸び悩み、30点から40点台がほとんどで、50点台以上は数えるほどしかなかったです。

そんな中、刑事系の採点者からのコメントで、「三段論法を徹底してください。文言解釈をせずにいきなりあてはめるのはあり得ません」といった趣旨のコメントをいただいたことがきっかけで、目が覚めました。このことがきっかけで、「三段論法で理解すること」を徹底的に追求しました。具体的には、①重要論点については、百選やえんしゅう本の事例を用いて問題提起→規範定立→あてはめの流れを自分なりに想起し、何回も練習する②重要判例判旨で規範が提示されているものの、判旨を読んだだけでは理由付けが分かりにくいものは、基本書やえんしゅう本、入門講座のテキストで該当箇所を探し、理由付けも理解することを繰り返し行っていました。問題提起を理解する際には、その論点が、どの条文のどの文言の話なのかを細かく確認していました。また、①②いずれを行うにしても、規範定立までの理由付けは、「自分ならこの条文のこの文言の解釈の問題だと捉えて、理由付けはこのように考えるけど、判例判旨や基本書にはどう書いてあるんだろう」といった自分なりの思考を挟むようにしていました。勿論、重要論点については、書き負けないために、最終的には判例判旨や基本書等に記載されている理由付け(受験生みんなが書いてくる理由付け)で本試験に臨まないといけないですが、自分の思考過程を挟むことで、より記憶にも残りやすくなりますし、理解も深まったかと思います。これらの作業は、今まで論証の形式的な「暗記」しかしてこなかった私にとって、飛躍をもたらすものだったと自信を持って言えます。

もっとも、論文試験は、三段論法を展開できていたからといって、問題文の事情が拾えていなかったり、論点落としをすると合格ラインが遠のきます。そのため、過去問を用いて「司法試験に向けた」問題演習をする必要があります。過去問を解いた年数ですが、私は、前述の通り、そもそも基礎知識を三段論法で理解し直すことに手間がかかったので、直近3年しか起案できませんでした。といっても、苦手な行政法、刑法、刑訴を中心に、時間があるときはある程度遡って問題文のみを読む作業をすることで、問題文の読み方を研究していました。また、選択科目は、起案は数えるほどの年数しかできませんでしたが、全年度分の問題文や優秀答案を読むことはできました。確かに、過去問全て起案できればそれに越したことはないですが、時間や自分のキャパ的に難しい人もいると思います。その場合は、「過去問演習をヤマ当てのためではなく、形式に慣れるためのもの」と割り切って、まずは直近3年に絞って、起案すればよいかと思います。なぜなら直近の問題は、最新の司法試験の問題形式が反映されている場合が多いからです。もちろん、直近3年のみでは過去問で既出の論点の再度の出題に備えることは難しいと感じる方もいるかと思います。その場合は、ある程度遡って問題文と採点実感だけでも読めば論点対策はできると思います。

もっとも、私は、過去問をヤマ当てのために用いてしまうと、その出題された論点しか勉強しないことになりそうで危険を感じたので、あまりヤマ当てのためには用いていませんでした。むしろ、私は問題文を読み落とすことによる論点落としが多かったので、問題文を読んで、思いついた法律構成が正解筋とズレていた場合には、「論点落としをしないためには、問題文をどう読めばよいのだろう」といった視点から、問題文の読み落としを防ぐ方法を考え続け、自分の思いついた方法を何個か試していました。最終的には、問題文に1文ずつ通し番号をふるやり方が自分に最も適していました。

このような過去問演習を通じて、自分が最も合格ラインに近づくための方法を編み出すことができました。

西口直前答練と先生の個別指導

 直前答練の西口先生の解説は、試験に役立つポイントのみをお話されているので、先生の発言は全てメモして、本試験前に読み返していました。また、同じクラスの中での優秀答案もその場で配布されるので、「相対評価」を意識しつつ、自分とどこが違うのか、自分に何が足りないのかを常に考える非常に良い機会となりました。

そして、個別指導では、私の答案のクセ等、的確にご指摘いただきました。自分の答案に不安があった私にとって、先生のアドバイスがなかったら、本試験中、解ける問題も解けなくなっていたと思います。自分の答案に不安がある人は、信頼できる先生の個別指導を受けるのも一つの手だと思います。

その他

 生活面においては、早寝早起きを心掛けていました。また、直前期は、朝の9時から勉強を始めて、夜の6時には勉強を終了していました。私の場合、これ以上やると翌日に支障が出るからです。また、夜には毎日1時間、ウォーキングをしていました。気分転換になって良かったと思います。

5 受験対策として使用した書籍・講座

選択科目集中答練

 たくさんの問題があるため、本試験の練習としても良いですし、直前期のヤマ当てとしても有用です。私は、ほとんど時間がなかったので、問題文を読む練習と、ヤマ当てとして用いていました。

短答過去問パーフェクト

 短答過去問パーフェクトは、解説も丁寧なため、非常に愛用していました。

えんしゅう本

 えんしゅう本は、「重要だけど、意外と書けない論点」がたくさん掲載されています。そのため、論点確認として使用していました。私は、刑法の罪名を間違えることが多々あった(事後強盗罪に気づかず、窃盗罪と傷害罪に分けてしまう等)ので、刑法のえんしゅう本の問題文を読み、「この問題文が出てきたら、○○罪を検討する」といったように、学習していました。

ぶんせき本

ぶんせき本は、再現答案のA答案を中心に見ていました。なぜなら、再現答案のA答案とC答案を比べると、明らかにA答案の方があてはめの充実度や三段論法が適切である場合がほとんどだからです。

ハイローヤー

ハイローヤーは、直前期のヤマ当てとして有用です。最後の論点確認の意味も込めて、一読した方が良いと思います。

6 これから受験する人へのアドバイス

LS在学生へのアドバイス

在学中受験等の観点から、なるべく早くから勉強時間を確保し、司法試験に向けた勉強することをおすすめします。応援しています。

来年初めて受験する方へのアドバイス

初めての受験は本当に不安になると思いますが、司法試験の合格は、究極のところ、短答で合格者平均点あたりの点数を取ることと、論文でAランク論点の論証を正しく書き、問題文の事情をより多く拾い、評価することにかかっています。

 自分に正直に、合格ラインを意識しつつ、愚直に努力し続けることが何よりの近道となると思います。応援しています。

7 最後に

私が今回合格したのは、支えてくれた家族、先輩、後輩をはじめ、辰已法律研究所大阪本校の皆様と西口先生のおかげです。

これからも、周りの方々への感謝を忘れず、日々努力したいと思います。本当に、ありがとうございました。

関連記事

安定して高得点を狙える科目「国際私法」の勉強法

Y.A
受験歴: 1回
慶應義塾大学法学部法律学科
慶應義塾大学法科大学院【既修】2022年入学
【受講歴】書籍利用 他
選択科目

短期間で合格を掴み取るには

Y.A
受験歴: 1回
慶應義塾大学法学部法律学科
慶應義塾大学法科大学院【既修】2022年入学
【受講歴】書籍利用 他
2023年度

模試をペースメーカーに勉強に取り組みました

E.N
受験歴: 4回
早稲田大学文学部
明治大学法科大学院【既修】2018年入学
【受講歴】全国公開模試 他
2023年度

完璧主義からの脱却

池田 新平
受験歴: 2回
慶應義塾大学法学部法律学科
慶應義塾大学法科大学院法務研究科【未修】2019年入学
【受講歴】全国公開模試 他
選択科目
各種サービス
  • YouTube
    チャンネル

  • メルマガ登録

  • 辰已のアプリ

Page top