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選択科目租税法のすすめ

清武 宗一郎さん
受験歴: 1回
東京大学法学部
2021年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練(第1・2クール) 他
選択科目

1 租税法を選択した理由

 まず、租税法を選択しようと思ったきっかけとしては、公認会計士試験とのシナジーを期待した、という点が挙げられます。また、租税は国家にとって非常に重要なので、この機会に法の仕組みを知っておきたいと思ったことも、租税法を選ぶきっかけとなりました。
 そして、実際に学習してみると、租税法が民事実体法の理解を不可欠の前提とするものであることが分かりました。このような総合科目としての特性にも惹かれ、そのまま試験科目として選択することを決めました。

2 租税法選択のメリットとデメリット

 租税法を選択するメリットは、試験に役立つ点として、以下の3つを挙げておきます。まず、暗記量が比較的少ないことが挙げられます。租税法の基本的な思考枠組みを理解しさえすれば、司法試験の問題もある程度検討できるようになるでしょう。また、採点実感が分かり易いこともメリットに挙げられます。基本的事項については採点実感でも繰り返し説明がなされているところであり、そこではやるべきことが具体的に指摘されています。さらに、租税法で得た知見を民事実体法の理解に応用できる点も、メリットの1つです。特に、経済学的な視点に触れることができるのは、民事実体法における経済的価値の捉え方に有益な変化をもたらすでしょう。
 租税法を選択するデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。まず、受験教材が少ないことです。租税法には定番となるわかりやすい教科書が存在しますが、受験参考書や講座については、乏しいといわざるをえないのが現状です。次に、受験者数が少ない点もデメリットです。受験者数が少なければ、単純に受験者間で情報交換する機会も減少しますし、アドバイスや相談の相手となる先輩等も見つけにくいでしょう。さらに、理論的な枠組みの体系的な理解が比較的難しいと思われる点も挙げられます。租税立法はパッチワークになっている部分があるため理論的整合性を見出しがたいことがある点を措くとしても、租税法の基本的な思考枠組みを理解するまでに時間がかかる可能性があります。特に、論理整合的な思考や経済学的な思考に苦手意識のある方は、注意が必要です。

3 予備試験合格後の学習状況

 9月中から所得税法・法人税法の基本書を通読し、口述式試験の合格発表後から、過去問演習を始めました。過去問演習では、初めの年度から10年くらいを答案構成し、出題趣旨・採点実感を読み進めるという形で進めました。残りは実際に時間を計って起案し、出題趣旨・採点実感に即して復習しました。その際、辰已法律研究所『一冊だけで租税法』を用いて優秀答案を参照し、相場観の獲得に努めました。また、並行して、辰已の選択科目集中答練を受講し、演習数を補いました。司法試験直前期には、なるべく租税法判例百選の判例を解説とともにつぶすようにしました。なお、過去問演習の当初から、論点ごとに論証と補足説明を記したオリジナルの論証ノートを作成し、理解・復習の便宜を図りました。

4 「私がやって成功した選択科目攻略法」

 特にやってよかったと思われるのは以下の2つです。
 まず、採点実感の通読です。前述したとおり、租税法の採点実感は基本7科目と比べて、何を理解すべきか、何を書くべきか、が分かり易いです。したがって、他の科目以上に、採点実感を全て読み込むことが、試験における行動規範の獲得のために最も近道となると思います。
 また、これは各科目に通じていえることですが、まとめノートを作成して理解を深めるとともに、復習しやすくしたことも、非常に有用であったと考えています。知識の一元化作業を通じて、体系的理解と効果的な復習とを同時に達成することができるからです。まとめノートは作り始めが大変ですが、事後確認のため典拠を明記することだけは意識して、コツコツ作るようにするとよいでしょう。

5 受験対策として使用した本

 知識の獲得・理解には、佐藤英明『スタンダード所得税法第2版補正2版』(弘文堂、2020)と渡辺徹也『スタンダード法人税法第2版』(弘文堂、2019)を利用しました。まず、租税法を選択するか否かも含めて、全体像の確認のために通読し、その後は辞書的に用いました。また、租税法判例百選も、判例ごとの論点習得のため、読んだ後に知識をまとめノートに位置付けるという形で、通読・参照しました。なお、他の辞書用の体系書として、金子宏『租税法第24版』(弘文堂、2021)も用いました。
 過去問演習の際には、辰已の『一冊だけで租税法』を用い、解説や優秀再現答案を参照することにより、過去問の理解に役立てました。現状、租税法の過去問集・再現答案集が限られていますが、『一冊だけで租税法』は全年度の上位合格答案を掲載しているため、これがあれば十分でしょう。租税法の採点実感は、答案に対する評価の例が比較的多く載っていますので、これと上位合格答案とを読み比べ、相場観をつかむという形で過去問演習を進めれば効果的だと思います。

6 辰已の講座について

 前述したとおり、私は選択科目集中答練を受講しました。本答練は租税法も用意されているため、演習書籍の限られている現状では、非常にありがたいものでした。
 問題の質については、基本7科目の答練よりも本試験に近い経験ができた、と感じました。特に、辰已は出題傾向の予測や詳細な解説レジュメに定評がありますが、本答練でもそれがよく発揮されていると思います。租税法の本試験では、基本的な(ものの理解するのは難しい)論点の理解を改めて問う問題のほか、既存の試験では問われていなかった比較的マイナーな論点や判例と異なる見解を考えさせる問題も一定の割合で出題されるのですが、前者はもちろん後者の問題についても挑戦的な予想問題が複数出題され、論点の解説では複数の学説の紹介がなされているため、出題の予測という点でも現場思考の練習という点でも、十分な質の経験を積むことができます。また、問題の量も多いため、一部は起案し一部は答案構成にとどめるなど、過去問の進捗具合に合わせて柔軟に利用することができます。
 以上の点でお勧めできる講座なのですが、解説講義はないため、講義中心で学習したい方は注意してください。解説レジュメは詳細なので論点の理解のためには解説講座がなくとも十分ですが、問題に対するアプローチの仕方や評価しうる答案の範囲などに関しては完全ではないのは否めないため、過去問・採点実感・再現答案の検討をある程度(直近2~3年以上)行った後に受講し始めることをお勧めします。租税法だけに限られたことではありませんが、採点実感に照らした試験の行動基準を獲得・応用することが最も重要なので、答練の際には採点実感に照らして適宜自分で問題や解説・解答例等を再検討することが必要不可欠です。このことを肝に銘じたうえで受講するとより成果を望めると思います。

7 アドバイス

①租税法初学者へのアドバイス
 できるだけ早く過去問に取り組めるように学習を進めてください。具体的には、佐藤英明先生の『スタンダード所得税法』のうち、補論「所得税に関わる手続き」を除いたLecture部分のみ読んだら、もう過去問に取り組み始めてよいと思います。過去問は、最初は答案構成だけにして(わからなかったら調べてもよい)、採点実感をしっかり読むようにすると進めやすいと思います。どのような問われ方をしたかを含めて論点を記録していくと採点実感の理解・復習がしやすいので、初学者の段階からまとめノートを作成し始めることをお勧めします。

②予備試験受験生へのアドバイス
 司法試験本試験の過去問は2つの独立した大問からなっているため、質・量ともに各大問が予備試験論文式試験の対策になると思います。予備試験合格後はなかなか時間もとれず、本試験過去問の量も膨大なため、予備試験段階から積極的に本試験過去問・採点実感を分析することを強くお勧めします。その具体的な方法は、上記①を参照してください

③来年受験する方へのアドバイス
 本試験を来年受験する方は、過去問や採点実感を十分潰せていないなら、それらをしっかり分析することを最優先としてください。その具体的な方法は、上記①を参照してください。これらを一通り見終わった方は、選択科目集中答練などを受講して演習量を増やしたり、過去問・採点実感の復習を行ったりしつつ、論点知識の維持増強を図るとよいでしょう。論点知識を得るには、租税法判例百選の判旨と解説とを地道に読み進めていくのがよいと思います。その際、まとめノートを作成すると復習や理解に非常に便利です。

辰已法律研究所 受講歴

・スタンダード論文答練(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・合格答案の型
・スタンダード短答オープン
・全国公開模試

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